平成22年度 《特別講演会》 内容

−『資源・エネルギー』『環境』『産業・経済』の融合−
我々は、地球規模での「環境保護」「資源・エネルギーの有効利用」「産業・経済の発展」という複雑に絡み合う3つの要因のバランスを保ちつつ、いかに未来を切り拓いて行くか、の難問を抱えています。
 本会では、この難問に対し、各々の要因における最新技術動向や法律問題、産業界や国の取組み等々を取り上げ、これまでに「地球環境問題へのスーパーコンピュータの応用」「地球シミュレータ計画」「燃料電池」「微量化学物質を検出する携帯型バイオセンサー装置の開発」「環境税導入の日本経済・エネルギーに及ぼす影響」「光触媒技術の最新動向と応用分野」「省エネ評価手法の開発」etc…の講演会・シンポジウムなどを開催し、藤嶋昭先生((財)神奈川科学技術アカデミー理事長)、伊藤利朗先生(三菱電機叶齧ア取締役)、増島勝先生(TDK椛纒\取締役専務)や産業技術総合研究所、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NED)、理化学研究所、宇宙開発事業団、日本原子力研究所など産・官・学から多くの諸先生方に御協力を頂戴してきました。
 本年は、次の通り開催します。

T.環  境
  テーマ:海洋酸性化研究の動向
  講 師:河 野  健 先生
      (独)海洋研究開発機構 地球環境変動領域 プログラムディレクター
 【講演概要】
 二酸化炭素の増加は、温度上昇や海面の水位上昇のほか、海洋環境に与える影響も懸念されている。  大気中の二酸化炭素濃度が増えると海洋に溶け込む二酸化炭素も増え、海洋の酸性化が進行し、生態 系に大きな影響を与える可能性がある。このような状況を踏まえ、欧州では9カ国27の研究機関が参画し 、海洋酸性化による生物学的・生態学的・地球化学的・社会学的影響の理解を深めるための研究計画 が進んでおり、米国でも全米科学アカデミーが包括的調査研究を実施しており、我が国でも環境省地球環 境研究総合推進費で海洋酸性化問題を主題に、現状把握のための観測や研究が実施されている。
 また海洋観測からは、日本近海では徐々に酸性化が進行しつつあり、特に北極海においては既に未飽和 海域がある等の結果が得られている。海洋酸性化が生物に及ぼす影響ひいては我々の社会生活に及ぼす 影響まで考慮すれば、生態学的基礎研究に加え社会学的視点の研究も必要であり、今後の大規模研  究の枠組みや現在の海洋の状況、今後の動向について詳述する。

U.資源・エネルギー
  テーマ:自動車用高出力・大容量リチウムイオン電池材料の研究開発動向
  講 師:河 本   洋 先生
       文部科学省 科学技術政策研究所 客員研究官、日本機械学会フェロー     

 【講演概要】
 ハイブリッド自動車(HV)、プラグイン・ハイブリッド自動車、電気自動車(EV)などの駆動電源として、軽量 ・小型化された二次電池の導入促進をはかることで大幅なCo2排出量の削減が可能となる。各種二次電 池の内で、重量または体積当りの出力密度およびエネルギー密度の点から、リチウムイオン電池が最も優れ た性能を有する。しかし、自動車用駆動電源として本格的に普及させていくには、出力および容量を飛躍 的に向上させた、安全性・信頼性が高い、大幅にコスト低減したリチウムイオン電池が要求される。
 高性能リチウムイオン電池とその構成材料、革新的な電極・電解質材料などに関する研究開発が日本の 政府系機関により推進されてきた。これらの公的資金によって推進するプロジェクトでは、基礎・基盤技術の 開発から実用化・普及拡大までの全体シナリオを作成し、特に画期的特性が期待できる全個体型リチウム イオン電池用の電極・電解質材料の基礎・基盤技術の研究開発を助成すべきであろう。

V.産業・経済
  テーマ:バイオレメディエーション ―微生物による環境修復技術の実際―
  講 師:池 上  雄 二 先生
       池上技術士事務所 代表

 【講演概要】
 環境負荷物質を取り除くために用いられる方法には大きく分けて化学的方法、物理的方法、生物的方法 などがある。これらの方法のうち、最も省エネルギーかつ省資源のプロセスが生物的方法であり、バイオレメデ ィエーション(生物的修復)が注目されるようになってきた。この技術の主役は、微生物である。すなわち、微 生物の代謝機能を巧みに利用して、環境負荷を分解したり無害化して最終的には炭酸ガス、メタン、水、 無機塩、バイオマスなどに変換してしまう技術である。既に欧米ではこの技術が実用化されており、その市場 が拡大されつつある。現在、日本でもバイオレメディエーションに関する国家プロジェクトが行なわれている。タ ーゲットとなった環境負荷物質はトリクロエチレンであり、これは半導体の洗浄などに多量に用いられ、環境 汚染が問題になっている。今後ますます重要になると思われるバイオレメディエーションであるが、欧米各国の 中でも特に開発・実用化が進んでいる米国の実情をケーススタディを交えながら詳しく紹介し、この技術の有 効性・経済性を解説する。

☆ 開催日時 : 平成22年6月6日(日)  A.M10:00〜P.M5:00
☆ テ ― マ : T.海洋酸性化研究の動向 (A.M10:00〜P.M12:00)
         U.自動車用高出力・大容量リチウムイオン電池材料の研究開発動向
                           (P.M12:45〜2:45)
         V.バイオレメディエーション―微生物による環境修復技術の実際―
                           (P.M3:00〜5:00)
☆ 会  場 : 東京八重洲ホール  
東京都中央区日本橋 3-4-13 03-3201-3631
☆ 定  員 : 100名(スクーリング希望の場合)  定員になりしだい締め切ります。
         なお、通信で受講の方は6月末日までにDVD(orVTR)、資料等を送付します。
☆ 申込期限 : 平成 22年6月1日
☆ 受 講 料 : 会員=無料