平成15年度シンポジウム内容

  

「平成16年シンポジウムは828()を予定していましたが延期することとなりました。次回詳細が決まりましたら改めてご案内いたします。」

                                             主催:科学工学技術委員会

平成15年8月23日、中央大学駿河台記念館において平成15年度シンポジウムを開催しました。
テーマは「技術者への評価はどうあるべきかを考える」。
当初、技術者派遣会社にパネリストをお願いしておりましたが、急遽、開催近くに「テーマの重要性から辞退」され、当日、聴講くださいました会員の益子薫氏に突然のお願いで、パネリストとして参加いただきました。
益子さんには御礼もうしあげます。

基調講演  -松井好先生-

 「科学技術と経済の会」は、社会における技術者の地位が余りにも低すぎるのではないか。その理由の一つは、皆さん、科学技術とその側面の知識は一流の知識と経験をお持ちだが、それ以外についての議論をしてみてもなかなか話が通じない。それでは、科学技術の分野で資源の少ない日本が世界と戦って行くことは難しいので、せめて経済の分野では専門家に負けない議論ができるようになろうではないか、ということで戦後まもなく誕生した団体。産・官・学から多くの人が参加して活動してきたが、ようやくそういう視点から具体的にいろいろな活動をする機会が急速に増えてきたと実感しています。
 今日は、私の終着点の実学の現状を見たうえで感じた点を中心に基調講演を申し上げます。
 私が、申し上げようと思っている点は、お手元の資料に4つの項目を挙げていますが、

1. 評価をきちんとやれるようにするための基本的条件として、価値基準を改めて明確に捉えなおす必要があると思う。

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2.日本の研究開発のマネジメントを振り返ったときに、外から見ると、かなり深刻に受けとめるべき弱点、盲点がある。

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3.研究成果の経済価値の計算を技術者はやっていないという声が日増しに高くなっているということを注目していただきたい。

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今日は、評価の話の中で、肝心の人の評価の話は極々表面的になぞっただけですが、ただ、評価の環境条件が整備できれば日常茶飯、評価基準が曖昧だとか、評価者の評価責任や被評価者の納得性に問題があるとか、いろいろと批判がありますけれども、とにかく、研究者や技術者で評価に経験が無い方はおられないわけですから、要は基本的なところがしっかりしていなければ手練手管をいろいろ追っかけても長続きはしないというのが私の結論です。
あとは、企業のCTOとしてやってこられた島崎先生のお話とディスカッションで詰めて往きたいと思います。

パネリストの講演  -島崎昭夫先生-

 松井先生の基調講演を基にしまして、私は経験などを中心にお話してみたいと思います。
私が研究所の所長をやりましたのが1980年前後です。丁度79年というのは、トゥエニィ・ワン・トゥ・トゥエニィ・ワン、21世紀まであと21年という時代。それから日本が経済大国としての自信を持ってきたのが80年代。90年代はご存知のようになってきた訳ですが、その頃しきりに2000年を迎えるにあたって、日本はどういう社会になっているだろうか。
機械はどうなっているか、それに伴って技術はどうだろうか、まさしく企業のトップと技術のトップが心を合せて行かなければならないというところがありました。

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 これでは技術屋の評価の問題、テーマの問題についてもダメということで別会社にした。
社長は経営、私は技術をみる、ということではじめた。そのときに、組織の運営・評価の問題などをやったこと、やれなかったこと、その後の経過などをお話したい。

1.7つの技術者のタイプ
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2.研究と開発の違い

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3.優れた技術者の資質と能力

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4.技術者評価の枠組み

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以上、お話してきましたが、このあとはディスカッションでさらに私の考えをのべさせていただきます。


パネリストの講演  -益子薫先生-

 -当日会場で開始直前にお願いしました-

 今日は、気楽な気持ちできたのですが、困ったなあ、会員だな、と思う気持ちでお引き受けさせていただきました。
少し私が、なぜ、ものすごく興味をいだいて参加しているか、そもそもどういう馬の骨かを紹介させていただきます。
 当然、製造業で技術をやっていたのですが、会社が外資と合弁企業を作るにあたり、移籍して技術をやっていましたが、気がついてみたらご紹介にありましたとおり取締役総務部長になっていて、そのうちに会社が外資100%になり、総務部長をやって面白いと思ったのは、外国の企業の技術の評価あるいは人の評価、金勘定まで含めて全部やりました。
冒頭、松井先生からお話がありました、技術屋の経済位はと仰られた。その通りのことをやってしまった、というのは、どんな会社でも多分、いろんな教育の中で経営講座みたいなものを私もさせられた。その時は他人事だったんですね。ところが責任をもってやれよ、と言われた途端に全然ちがいます。ということで、私、今、経理課長の仕事できると思うのですが、経理=経済かというと決してそうではない。お金の勘定は結局、価値の勘定ですね。非常にロジカルで技術屋がやるべきことだな、と実感した。

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価値というのは、実際に評価をする立場でお話する時と一般論で話をする時とは随分違うという気がしている。松井先生、島崎先生のお話は随分大きなお話で、非常に重要なことだと思うんですね。日本の価値基準を決めようよ、これがないと困るんですね。拠り所がなくなっちゃうんですから。という事と、ジャア我が社ではどうするんだという事は、何を根拠に、何をベースにやらなければならないかという事は、技術の世界は化学だろうと、機械だろうと数式あるいはいろんなツールがあります。そういうツールを共通認識で使うことはそれほど大きな差はないと思います。だから大きな話を知ったうえで、自分達の身近なところはどうあるべきかを考えて行かなければならない。
今日は、私がふつつかながら、この会で「技術力の向上について」の話を何回かさせていただいたことがありまして、それに繋がる話だという事で参加しましたら、この席に立たされる。別に被害者意識で言っているのではなく、いろいろ私の考えをうまく表現できるかどうか分かりませんが努力したいと思います。
技術力の向上については、骨子はたった一つなんですね。私の思っていることは「コミュニケーションだ」と。田中さんのノーベル賞の話がでました。私も身近に東北大の人がおり、同窓会の席で田中先生の話を聞いてビックリしたと、又聞きの又聞きみたいで恐縮ですが、さっき松井先生が仰いましたように、最初新聞報道では変わり者みたいで、役職も何もいらない、煩わしいのは嫌で、会社からみたらこんな扱いにくい人はいないんじゃないか。それをノーベル賞。すごいことですね。日本はそれを評価するシステムがないみたいな、先にノーベル賞もらっておたおたしている、日本の文化なものでそれが悪いんじゃないのと批判的に思いました。ところが田中さんのお話を又聞きするにつけて全然違う。
つまり技術バカじゃないんですよね。全く。そのお客様の所に伺って、自分の研究成果をコミュニケーションをとりながら、自分の研究テーマをこっちの方向に振らなければダメとか、それが会社として自分がやっていることの貢献度だという理解のもとにやっておられたと思うんですね。従って、煩わしいことは嫌だといった時に、会社もやりたい事をやれと容認する会社のシステムもすごいと思います。
私のたどってきた道は、島崎先生の仰るとおり、十人一色です。そこでスタートして違うと思いながらやってきてこういう世界。だから会社も個人もそうだと思うんですね。
で、評価ということで一つだけ質問といいますか、疑問が付きまとっているのは、評価をするのは、結果は何で示しますか、ということだと思うんですね。どうも世の中はお金、お金なんですね。そうかな?と思ってまして、お金、田中さんの例がそうなんですね。あれで田中さんが満足して会社も喜びになれば最高ですね。
何を言いたいかというと、評価をする目的なんですね。それはモチベーション、国家で言えば、技術なんとか提案というと思うんですが、会社でみたときに、直ぐお金に換算するというのが世界的な傾向だと思っています。自分自身もそうなんですけど、お金で計れるというのは大したことないね、と思ったりしているんです。その辺はもっともっと若い現役の技術者の方々に是非きたんのないご意見を寄せられて松井先生のところでいろいろお考えになる時に参考にしていただいたほうがいいんじゃないかと思っています。

パネルディスカッション

司   会:松井  好 先生
パネリスト:島崎 昭夫 先生
      益子  薫 先生

 3時15分から4時50分まで、聴講者からの質問・ご意見も交え、活発なディスカッションが行われました。
 最後に、松井先生から本日のシンポジウムの総評とまとめに続き、「最後まで参加くださいました技術者の方々に御礼申し上げると同時に、この難問に挑み開催されました主催者に敬意を表します」で終了しました。